卵子凍結

本日は培養部から「卵子凍結」についてお届けします。


卵子凍結とは、通常の不妊治療で行っている胚凍結とは異なり採卵した卵子を受精させる前に凍結する技術です。
元々は癌治療をされる患者様が、将来妊娠の可能性を残すという【医学的適応】として用いられていた技術ですが、最近では加齢による卵子の老化に備える【社会的適応】の技術としても注目されています。実際にアメリカでは、社会的適応としてFacebook社とアップル社が「希望する女性社員に対して、卵子凍結保存に会社の保険を適用する」ことを発表しています。日本でも千葉県浦安市が少子化対策として未受精卵凍結の助成(平成29年度で終了)を行うなど、国内外のニュースを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
今回は社会的適応の側面からお話させていただきます。


この卵子凍結はARTにおいて比較的新しい技術であり、将来妊娠を希望している女性に妊娠の機会を残すことが出来る為、様々な場面での利用が期待されています。
しかし、日本生殖医学会は2013年に「社会的適応による未受精卵子あるいは卵巣組織の凍結・保存のガイドライン」を出しており、その一説に「凍結・保存の対象者は成人した女性で、未受精卵子等の採取時の年齢は、40歳以上は推奨できない。また凍結保存した未受精卵等の使用時の年齢は、45歳以上は推奨できない。」と記載があります(引用①)。
これは、卵子の質が母体の年齢に依存しているというだけでなく、妊娠した際にも様々なリスクが考えられるからです。論文によって数に差はありますが、卵子凍結の生存率は68.6%~89.7%、受精率は71.7%~85.8%、臨床妊娠率は10.8%~43.3%だと報告があります(引用②)。


卵子凍結は受精卵と比較して生存率が低いという報告もあり、難しい技術であることが知られています(引用③)。
卵子は体細胞に比べ大きく、1つの細胞からなります。卵子の細胞骨格は細胞分裂を可能にするだけでなく、特に減数分裂や紡錘体形成、雌雄前核形成などに重要です。発生過程において重要な役割を持ち、凍結障害を受けやすいことが知られています(引用④)。
また、卵子凍結において細胞膜の透過性(細胞の内側と外側で物質をやり取りする能力)は凍結を成功させる上で重要なのですが、細胞膜の透過性が胚盤胞と比べて低く、凍結する際に卵を守る働きをする「凍結保護剤」を透過しづらいことが報告されています(引用③)。


卵子凍結を行った全ての卵子の生存、受精および胚盤胞到達の保証は残念ながらできません。卵子凍結を行った卵が胚盤胞に到達したとしても、グレードによっては移植できない可能性があることをご理解いただけますようお願い致します。




参考文献
①一般社団法人日本生殖医学会 http://www.jsrm.or.jp/
②Cil AP, Bang H, Oktay K. Age-specific probability of live birth with oocyte cryopreservation: an individual patient data meta-analysis. Fertil Steril. 2013;100:492–9.
③Hosseini SM, Nasr-Esfahani MH. What does the cryopreserved oocyte look like? A fresh look at the characteristic oocyte features following cryopreservation. Reprod Biomed Online.2016;32(4):377–387.
④Brambillasca F, Guglielmo MC, Coticchio G, Mignini Renzini M, Dal Canto M, Fadini R. The current challenges to efficient immature oocyte cryopreservation. J Assist Reprod Genet. 2013;30(12):1531–1539.

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