精子凍結

本日は培養部からお届けします。
前回培養部からは卵子凍結についてお話しましたが、今回は精子凍結についての論文をご紹介します。医学的適応においての精子凍結では、放射線治療等により将来不妊になってしまう可能性に鑑みて、がんなどの治療前に患者の精液を凍結します。その凍結期間は数年の場合もあれば数十年にわたる場合もあり、また一切使われない場合もあります。
この論文は、がんなどの治療前に凍結された精液の保存期間、生殖補助医療(ART)への使用率、その結果について考察したものです。

Muller I et al. Semen cryopreservation and usage rate for assisted reproductive technology in 898 men with cancer. Reprod BioMed Online (2016) 32:147-153
1983年から2013年の間に精液を保存した898名の患者についてオランダのユトレヒト大学で行われました。
患者はそれぞれ、睾丸癌、ホジキンリンパ腫、白血病、非ホジキンリンパ腫等を有していて、精液保存時の患者平均年齢は29歳(12~63歳)でした。
898人の内、96人(10.7%)の凍結精液がARTに使用され、304人分(34%)は廃棄(死亡・回復・自然妊娠・挙児希望無しとの理由により)され、残りの498人分はまだ使用されていません。
凍結精液をARTに使用した患者のうち、78人がユトレヒト大学で治療を行いました。人工授精、体外受精、顕微授精でそれぞれ13人、19人、28人、合わせて60人(77%)が子供をもうけ、18人は凍結精液では子供を得られませんでした。この18人の内2人は、提供精子によって子供をもうけました。
妊娠した夫婦と妊娠していない夫婦の平均保存期間に差はなく(それぞれ59ヶ月と57ヶ月)、凍結期間とARTの結果(受精率・生産率)との間に有意差はありませんでした。
結論として、凍結保存精液の使用率は10.7%と低いものの、凍結保存精液をARTで使用した場合の成功率は77%ということでした。
凍結精子の保存期間は精子の質に影響を与えませんが、凍結・融解の過程は精子の運動性に負の影響を及ぼすとの報告があります(参考文献①)。しかし、1992年に細胞質内精子注入(ICSI)が導入され、運動性の低下した精子でも受精・妊娠することが可能になっています。当院でも、体外受精の際に凍結精子を用いる場合にはICSIの適応となっています。

参考文献
①O’Connell, M., McClure, N., Lewis, S.E., 2002. The effects of cryopreservation on sperm morphology, motility and mitochondrial function. Hum. Reprod. 17, 704–709.

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