AUGMENT治療について

本日のブログは、培養室からお届けいたします。

出生時には卵巣内の卵子の数が決まっており、質は低下していくということを耳にしたことがあるでしょうか。
質の低下の原因のひとつに、「ミトコンドリア」の不足や機能障害があるとされています。

2014年に自家ミトコンドリア移植法(
AUGMENTオーグメント
治療)という治療方法が発表されました。
この方法は、ミトコンドリアの不足や機能障害により引き起こされる卵子の質の低下を改善する方法です。ミトコンドリアは細胞質内に存在し、エネルギーを供給することによって受精など胚発生の過程を助けています。

AUGMENT治療発表以前は、質の低下を改善するために、若い提供卵子から細胞質を移植(ミトコンドリアを移植)するという方法が行われていました。しかしこの方法は、他者のミトコンドリアを供給することによる倫理的問題や、産みの親と提供者の2種類のミトコンドリアを持つことによる健康的問題が生じる懸念があります。
近年、出生後の卵巣内にも卵子幹細胞が残っていることが発見され(今までは卵子の幹細胞はないと言われていましたが)、そこから本人のミトコンドリアを精製することができるようになりました。

2017年のヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)では、31~46歳の患者さまを対象に行った29周期のAUGMENT治療について発表されています。
採卵後培養3日目における分割胚での検討を行っており、5細胞以上に分割しているグレードⅠ~Ⅲの胚の割合で比較しています。30代の患者さまでは、AUGMENT治療を行う前は31.3%であったのに対し、治療後は66.5%となり、有意差が認められました。胚盤胞率や妊娠率についての記載はなく、有意差はないと思われます。40代では、5細胞以上に分割しているグレードⅠ~Ⅲの胚の割合に有意差はありませんでした。

今後は、更なる有効性と安全性の検証が必要です。
また、成熟卵子を作れないとそもそもこの治療は出来ず、閉経した方や化学療法によって卵巣機能が失われた方には行えません。

上記のような段階なので、AUGMENT治療は、まだ研究的な治療という位置づけになります。



1. Woods DC, Tilly JL.: Autologous Germline Mitochondrial Energy Transfer (AUGMENT) in Human Assisted Reproduction. Semin Reprod Med. 2015 Nov;33(6):410-21. doi: 10.1055/s-0035-1567826. Epub 2015 Nov 17. Review

2.  Y.Miyamoto, A.Koike, S.Hashimoto, T.Inoue, Y.Morimoto: The autologous mitochondrial transfer into mature oocytes is an attractive option in patients who produce poor quality embryos.  33rdAnnual Meeting of European Society of Human Reproduction and Embryology (ESHRE). 2017.7.2-5; 165

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