着床前診断

3月になり、暖かくなってきましたね。

今回は培養部から「着床前診断」に触れてみようと思います。

この言葉をご存じでしょうか。

「出生前診断」が妊娠中に胎児の疾患の有無を検査・診断するのに対して、

「着床前診断」は、文字通り受精卵が子宮に着床する前(つまり、培養中)に胎児の疾患の可能性を検査するものです。

正確には着床前遺伝子診断と言われ、PGD (preimplantation genetic diagnosis)PGS(Preimplantation genetic screening)があります。

どちらも移植前の受精卵の細胞の一部を採取して検査しますが、PGDは調べようとする一疾患の遺伝子情報を診断します。そして遺伝的に正常な胚を移植することで流産を回避することが期待されます。PGDは基本的に目的とする一つの遺伝子の異常を調べるので、不特定多数の疾患の有無を検査することはできません。

対して、PGSは特定の疾患ではなく、受精卵の染色体の数的異常(数が少ない、多い、または正常)を調べます。染色体の数が正しくない状態を「異数性」と言い、流産や赤ちゃんの先天性異常の原因になることがあります。PGSにより異数性の受精卵を回避することで、こちらも流産を避けることが期待されています。

 

どちらも、より妊娠継続能の高い胚を選び、流産率を下げることを目的としていますが、日本では誰にでも認められているわけではありません。対象となるのは、親に遺伝疾患がある、これまで異数性による流産を繰り返している等のカップルであり、さらに一症例ごとに日本産科婦人科学会の倫理審査を受け、承認されてようやく行える検査です。行える施設も同学会の認可を受けた施設に限られます。

日本ではまだ様々な課題があり、海外のように広く行えるのはまだ先かもしれません。

 

しかし、遺伝子分析技術は進み、細胞の採取も8細胞の胚から1つ細胞を取って調べる方法から、胚盤胞から細胞を複数とって検査する方法に移行し、よりしっかりした診断ができ、胚にも負担が少ない技術が確立されています。

それでも実際に移植する受精卵の細胞の一部を取るので、全ての工程に非常に繊細な技術が求められることには変わりありません。

ここ数年、PGD/PGSを踏まえた培養士向けのセミナーが増えてきたように思います。

当院では着床前診断をしておりませんが、もし将来これらの検査がもう少し広く行われるようになった時のために、PGD/PGSを行っている施設の先生のセミナーに参加し、実際にトレーニングするなど、受精卵から安全に細胞を採取する技術を学んでいます。

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