2022年4月から生殖補助医療に対する保険適応が開始しました。
保険適応で使用できる薬剤は決められており、治療回数と対象年齢に制限が設けられています。保険診療は2年に1回見直しがあります。最新の情報は、HPのお知らせや当院SNSなどでもご確認ください。

 当院ではタイムラプスインキュベーターで胚培養をおこなっています。胚に負担をかけずに胚発育の観察をおこなうことにより、適切な胚を選択して、適切なタイミングで凍結することが可能となっています。

IVF-ETとは

採卵 画像をクリックすると大きい画像で確認できます 体外受精(IVF)とは、排卵近くまで発育した卵子を体外に取り出し、精子と接触させ、受精し分割した卵を子宮内に戻す不妊治療のことです。1978年にイギリスで初めて体外受精児が誕生して以来、全世界に急速に普及し、日本でも年間約50000人の赤ちゃんが体外受精により誕生しています。卵管が閉塞している、もしくは機能していない場合や、精子の数や運動率が不十分であり、人工授精では妊娠しない場合、また他の不妊治療(排卵誘発、人工授精など)で妊娠に至らない場合に体外受精を行います。

胚移植 画像をクリックすると大きい画像で確認できます 採卵は、静脈または鎮痛剤投与下に、経腟超音波で卵胞を観察しながら、腟の壁から細い針を刺して卵巣を直接刺すことにより卵胞液を吸引し、その中にある卵を採取します。体外受精で得られた受精卵を、採卵2~5日後に、細いチューブを腟から子宮内へ挿入し、受精卵を注入します(新鮮胚移植(ET))。採卵には概ね20分、胚移植には概ね10分の時間がかかります。

最近は、すべての良好胚を一旦凍結する(=全胚凍結)ケースが多くなっています。これは①排卵誘発周期の内膜の状態が最適でない、②卵巣過剰刺激症候群のリスクが高く、妊娠するとさらに悪化する可能性がある、場合で行われます。

ICSIとは

顕微授精(ICSI)は、受精卵を得るために顕微鏡で観察しつつ精子を卵の細胞質内に注入するという、1992年に始まった治療法です。顕微授精の対象になるのは、極度の精子減少症がある場合、体外受精において受精率が悪い場合や受精障害がある場合です。

当院では、初回体外受精を行われる方の場合は、処理前後の顕微鏡下での精子所見と精子速度の分析により、低受精率が予想された場合に顕微授精を行っております。

顕微授精(ICSI)の手技について

採取した卵と精子を共培養して受精を促す体外受精に対し、顕微授精は精子を卵細胞質まで注入するところまで行います。方法としては大きく分けて2つあり、①吸引して細胞膜を破る方法と、②ピエゾを用いて細胞膜を破る方法です。当院では②のピエゾシステムによる、卵子に対する負荷を軽減した方法でおこなっています。これは先の尖っていない針を用いてピエゾで振動をあたえて卵の細胞膜を破る方法です。吸引法よりも卵に与えるダメ-ジを少なくできるため、卵子が変性しにくい利点があります。

胚凍結

近年は、良好胚を一旦全て凍結し(全胚凍結)、次週期以降に融解胚移植することが標準的になっています。その理由としては①採卵前から黄体ホルモンが上昇し、子宮内膜が着床に最適な環境とならない場合がある②妊娠により卵巣過剰刺激症候群を発症するリスクがある、ことが挙げられます。治療周期によっては新鮮胚移植が問題ないと判断される場合もあります。

アシステッドハッチング

孵化 画像をクリックすると大きい画像で確認できます アシステッドハッチング(AHA)は移植した胚の着床率をすこしでも上げるために行われる技術です。胚が胚盤胞まで進むと次の段階として透明帯より脱出し、子宮の内膜に着床するプロセスが起きます。この時に透明帯が厚かったり、硬かったりするとこの脱出が阻害されて着床に至らないことがあります。このハッチングを助ける(アシストする)ことからこのように呼ばれています。

当院では最新のレーザーシステムを使用したアシステッドハッチングを行っています。

治療費

 2022年4月1日から生殖補助医療に対する保険適応が開始しました。
 対象患者については下記の厚生労働省のサイトで確認できます。
 3割負担の保険証をお持ちの方は、保険点数が3倍したものが自己負担額となります。
 最終的には1ヶ月の費用負担は高額療養費制度の上限までとなります。上限の金額は加入する医療保険の規定によりますので、各自加入する保険機関にご確認ください。
 また、採卵術、移植術は民間の医療保険の給付対象となっている場合があります。当院では原則としてタイムラプスインキュベーターで胚培養をしているため、先進医療Aとしての費用を加算させていただいております。

画像をクリックすると大きい画像で確認できます

https://www.mhlw.go.jp/content/000913267.pdf

詳しくは料金表ページをご覧ください。

着床前診断

 当院は2020年より日本産科婦人科学会が主導する、着床前異数性検査、構造異常検査の有用性に関する他施設共同研究から承認を受けています。

 胚移植が反復して不成功となる場合、可能性が高い順に①胚の質や染色体異常などの原因で着床しない、あるいは着床後に発育しない②子宮環境の問題で着床しない③免疫性不妊等の原因が考えられます。

 胚の染色体の異常が発生する頻度は加齢とともに増加します。

 着床前診断(PGT: preimplantation genetic testing)とは、胚の細胞の一部を採取して、胚の染色体を調べる検査のことです。

PGT-A: 染色体数が正常な胚(正数性胚)か異常な胚(異数性胚)かを調べます。
PGT-SR: 主に習慣流産の方が対象で、特定の染色体間で起こす染色体の構造異常を検査します。

 着床前診断の対象は日本産科婦人科学会により規定されております。2022年7月現在、当院は産科婦人科学会の臨床研究に参加する形で胚移植の反復不成功もしくは習慣流産の方を対象に実施しており、保険診療外の治療となります。あらかじめ、連携する遺伝専門医の遺伝カウンセリングを受けていただいております。対象となるかを確認のうえ、資料のお渡しと説明を致しますので、検討されている方は受診時にお伝えください。

着床障害

 着床率を下げる要因として推定されているものがいくつかあります。検査や治療のプロトコールはまだ研究段階のものも多く、自費診療となります。

希望の方には受診時に説明冊子のお渡しと検査費用の説明を致します。原則として当院で生殖補助医療を受けている方を対象としていますので、比較的リーズナブルな検査費用でさせていただいております。検査のみのご受診はお受けしておりません。

① 慢性子宮内膜炎 子宮内細菌叢の乱れ

 腸内細菌叢(腸内フローラ)の乱れが消化器疾患のみならず、全身の様々な疾患の病態に関与していることが指摘されています。子宮内膜細菌叢(子宮内フローラ)の乱れも不妊症や不育症に関与しているのではないかと注目されています。

 慢性子宮内膜炎といわれているものは、子宮内膜の間質に形質細胞の浸潤が認められる病態であり、ほとんどの方に自覚症状はありません。近年、原因不明不妊との関連が指摘されています。慢性子宮内膜炎の原因はいまだはっきりしていませんが、腸球菌、大腸菌、連鎖球菌、マイコプラズマ、ウレアプラズマなどが膣内から子宮内に入り感染を起こすことが原因のひとつであると考えられています。

 子宮内腔の細菌叢を検査する方法としては、子宮内膜フローラ検査(Varinos社)、EMMA+ALICE検査(Igenomix社)などがあります。どちらも、子宮内膜組織を吸引採取し、次世代シークエンサーをもちいた解析により細菌叢(フローラ)をしらべます。

 善玉菌ともいえるラクトバチラス菌が90%以上を占めるのが理想的とされています。それ以外の菌が多い場合、まず検出された菌に効果がある抗生剤をしっかり投与します。これと平行して、善玉菌であるラクトバチラス菌が増えやすい環境をつくるために、ラクトバチラス菌の繁殖に必要なラクトフェリンの服用を継続します。1ヶ月以上服用後、再検査をすると多くの方で改善が確認されています。

 しかし、この病態にはまだ解明されていないことが多く、治療プロトコールをガイドライン化するためのエビデンスがまだ十分ではないと考えられています。そのため、2022年4月の時点では関連する検査で保険適用になったものはなく、自費診療で行われています。

② ERA検査(Igenomix社)

 胚が子宮に着床するのに適した時期(受容期、着床の窓)があるとされています。この時期にあたるかどうかを、移植時期の子宮内膜組織をもちいた遺伝子解析により調べる検査です。受容期のずれがあると診断された場合、ホルモン補充周期の黄体ホルモン開始時間をずらすことにより補正します。

不育症

 比較的若年にもかかわらず流産を繰り返す場合、流産が偶発的なものではなく、流産しやすい素因がある可能性があります。

 不育症検査は一部を除いて保険適用外となりますが、対象となる方は不育症検査の助成金制度もあります。

① 抗リン脂質抗体症候群
  アスピリン療法やヘパリン療法により流産率が低下することが期待されます

② 染色体構造異常
  着床前診断のひとつであるPGT-SRの対象となります。

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